強震観測小委員会は、強震観測に係る諸々の問題を学会外部の関連機関との連携をはかりながら横断的に検討・整理し、学会での強震動分野における情報発信及び先導的役割を果たすべく1997年4月に構造委員会・振動運営委員会の下に新しく設置された。そのため本小委員会は、建築学会各支部および強震観測に関連する各機関の代表者により構成されている。また、本小委員会の下には、関東および近畿地区にワーキンググループ(WG)が結成され、親委員会との連携をとりながら具体的な活動項目につて検討を行っている。ここで、本小委員会が設置されるまでの経緯を簡単に振り返ってみると以下のようになる。

 1956年に設置された耐震連絡委員会は、建築物の地震災害とその調査に関する情報交換及び地震災害調査報告の作成のために、学会内での各種関連研究委員会を横断的に連絡する情報交換組織として長年に亘って幅広い活動を行ってきた。また、その下部組織としての強震観測小委員会は、この間、強震観測データに関する情報の収集・整理を行い、同時に、建築会館に設置されている強震計の管理と観測データの公表を任務としてきた。1987年に発生した千葉県東方沖地震のディジタル強震データ集が同小委員会から刊行されている。1992年4月に学会委員会組織の一部改組が実施されたことにより、上記の耐震連絡委員会は研究委員会としての地震災害委員会として生まれ変わった。また、それに伴って、強震観測小委員会は、地震災害委員会の下、強震観測運営委員会とその下部組織である強震データ小委員会に再構成された。両委員会は共同で1995年に、強震データの活用に関するシンポジウム「強震データベースの現状と共同利用の試み」を開催し、強震動データを効果的に活用するために建築学会として何をどうすべきかについて討議された。また、委員会内部で共同利用された関東地方で発生した3つ地震(1990年伊豆大島近海,1990年神奈川県西部,1992年東京湾の各地震)の貴重な強震動記録を広く建築学会会員に公開した。

 本小委員会は、以上のような経緯の基に設立されているが、本小委員会設立前の1995年には、兵庫県南部地震という特筆すべき地震災害が発生した。この地震以来、公的機関による強震観測体制が以前とは比較にならないほど充実してきたことは周知の事実であり、建築学会を取り巻く強震観測に係る環境は激変している状況にある。

 ここに取りまとめた報告は、本小委員会の下に結成されている関東地区WGの2年間にわたる活動内容の一部をとりまとめたものであり、1995年兵庫県南部地震以来急激に変化した強震観測網や強震動データベースの現状、強震動データベースの望まれる姿、強震観測の将来展望につて述べている。

 なお、この活動報告は、建築学会としての正式な手続きを踏んだ刊行物ではなく、強震観測小委員会の内部資料として各WGの作業成果を取りまとめたものである。ここに建築学会会員各位の御参考になれば幸いである。

1999年3月

強震観測小委員会

主査 北川 良和

 

 

強震観測小委員会および関東地区WGメンバーリスト

  強震観測小委員会

   主査 北 川 良 和(広島大学)

   委員 青井真(科学技術庁防災科学技術研究所)、天池文男(竹中工務店)、

      鏡味洋史(北海道大学)、鹿嶋俊英(建設省建築研究所)、

      片岡俊一(清水建設)、工藤一嘉(東京大学地震研究所)、

      渋谷純一(宮城工業高等専門学校)、杉戸真太(岐阜大学)、

      高橋克也(鹿島建設)、日比野浩(大成建設[現・理化学研究所])、

      福和伸夫(名古屋大学)、堀家正則(大阪工業大学)、

      山村一繁(東京都立大学)、若松邦夫(大林組)

   関東地区WG

        主査 若 松 邦 夫(前掲)

     SWG−A(共同観測と記録評価WG)

        幹事 片 岡 俊 一(前掲)

           植 竹 富 一(東京電力)

           鹿 嶋 俊 英(前掲)

           小 林 孝 至(西松建設)

           境   茂 樹(ハザマ)

           芝   良 昭(電力中央研究所)

           日比野 浩  (前掲)

           渕 上 勝 志(五洋建設)

           松 崎 浩  (熊谷組)

           三 浦 篤  (日本国土開発)

           安 井 健 治(奥村組)

     SWG−B(強震DBシステム構築WG)

        幹事 天 池 文 男(前掲)

           木 村 正 彦(東急建設)

           栗 田 勝 実(東京工業大学)

           座 間 信 作(消防研究所)

           佐間野 隆 憲(日本物理探鉱)

           土 肥 博  (NTTファシリティーズ)

           長 屋 雅 文(佐藤工業)

           堀   直 人(国士館大学)

           山 村 一 繁(前掲)

     SWG−C(強震動データ分析WG)

        幹事 高 橋 克 也(前掲)

           青 井 真  (前掲)

           市 川 正 武(東電設計)

           斉 藤 芳 人(前田建設工業)

           高 崎 芳 夫(フジタ)

           村 上 勝 英(日建設計)

           山 田 眞  (早稲田大学)

           渡 壁 守 正(戸田建設)